キャッシュフローを制する者が「不動産投資」を制す!
「立地も良いし、建物も魅力的。道路付けも申し分ない…この物件、いいかも!」
そう感じたときに、必ず確認すべきなのが キャッシュフロー(CF) です。
しかも、ざっくりとした計算ではなく、実際に自分の財布に残るお金をしっかり把握することが重要です。
そこで今回は、不動産投資におけるお金の流れを理解するための基本ツール、「キャッシュフローツリー」についてご紹介します。
不動産投資の利益構造をざっくり捉えると…
不動産投資の利益は・・・
とてもシンプルですよね。
でも、実際のキャッシュフローを正確に把握するには、もう少し深掘りが必要です。
キャッシュフローの流れ:7つのステップ
具体的なCFを求めるには、以下のような流れで計算していきます。
少し複雑ですがご安心を。分かりやすく1~7項目についてわかりやすく解説していきます。
1・GPI
(総潜在賃料収入/Gross Potential Income)
1棟アパートやマンションを購入する際、まず確認するのが「年間家賃収入」ではないでしょうか。
ただし、この家賃収入は、毎年必ず一定とは限りません。
満室であれば理想的ですが、現実には空室や滞納が発生することもあります。
さらに、空室が埋まる際には、以前よりも賃料が下がることもあれば、逆に上がることもあります。
そこで登場するのが GPI(Gross Potential Income)=総潜在賃料収入 です。
これは、仮に現在の入居者が全員退去し、新たな入居者が満室で入居した場合に「得られるであろう年間家賃収入」を指します。
不動産を購入した後は、入居者の満足度を高めることや、長期入居を促す工夫が求められます。
これらの取り組みが、結果的にGPIの向上につながります。
購入後の運営にどれだけ力を注げるかが、不動産投資の成果を大きく左右しますので、「買って終わり」ではなく、「買ってからが始まり」、を意識した運営こそが、資産価値を高める鍵です。
2・EGI
(実効総収入/Effective Gross Income)
「1棟アパート」や「1棟マンション」を運営していると、さまざまな事態が発生します。
たとえば、家賃の滞納によって本来得られるはずの収入が減ってしまうこともあれば、逆に「駐車場」「自動販売機」「コインランドリー」「看板広告」などによって、家賃以外の収入(雑収入)が得られることもあります。
つまりEGIは、「現実的に得られる年間収入」を示す指標であり、空室率や稼働率を反映した、より実態に近い収入の把握に役立ちます。
GPIだけでは見えない「収益の実態」を把握するために、EGIの理解は欠かせません。
物件の収益力を正しく評価するには、空室リスクや雑収入の可能性も含めて考えることが重要です。
3・OPEX
(運営費/Operating Expenses)
仮に、1億円の1棟アパートを購入し、年間のEGI(実効総収入)が700万円だったとします。
この700万円がそのままお財布に入ってきたら…嬉しいですよね(笑)。
でも、残念ながらすべてが手元に残るわけではありません。
アパートやマンションを運営・維持していくには、さまざまな費用がかかります。
代表的なものとしては、以下のような項目があります。
これらの費用をOPEX(Operating Expenses)=運営費と呼びます。
つまり、物件を維持するために必要な経費です。
OPEXの割合は物件の状態によって異なりますが、一般的には以下のような傾向があります。
4・NOI
(営業純収益:Net Operating Income)
もしEGI:700万円でOPEX:200万円であれば、差し引いた家賃収入は500万円になりますよね。
また、物件の実際の収益力を表す大事な指標で、この500万円を物件価格1億で割ると5%になり、この5%が「NOI利回り」または「NET利回り」とも呼ばれます。
NOI利回りは、物件の築年数や状態によって変動しますが、たとえば、新築物件は修繕費がほとんどかからないためOPEXが低く、NOI利回りが高くなる傾向にあり、中古物件では修繕工事が発生しやすくOPEXが高くなるため、NOI利回りはやや低くなる可能性があります。
5・ADS
(年間元利返済額:Annual Debt Service)
NOI(営業純収益)として500万円が手元に残るとしたら、それはとても嬉しいことですよね。
しかし、多くの投資家はレバレッジ(借入)を活用して物件を購入するため、その収益から銀行への年間返済額を差し引く必要があります。
ちなみに不動産投資には「エクイティ」「デット」という表現があります。
「エクイティ」とは、自己資金を支払う者、いわゆる投資家のこと、「デット」のデットはAnnual Debt Serviceの(Debt)からきいて、(Debt)を訳すと(借金)、いわゆる銀行のことです。
6・BTCFo
(税引前キャッシュフロー:Before-Tax Cash Flow from operation)
NOI(営業純収益)からADS(年間元利返済額)を差し引いた金額が、実際に手元に残るキャッシュフロー(CF)となります。
7・ATCFo
(税引後キャッシュフロー:After-Tax Cash Flow from operation)
BTCFo(税引前キャッシュフロー)から税金を差し引いた後に残る金額が、ATCFo(After-Tax Cash Flow from Operation)=税引後キャッシュフローです。
税金の影響は物件の収益構造に大きく関わるため、ATCFoを把握することで、投資の実質的な収益性をより正確に評価できます。
特に、減価償却などの会計上の調整が税額に影響するため、キャッシュフローと課税所得の違いを理解することが、投資判断や資金計画において重要です。
まとめ
ここまで、不動産投資におけるキャッシュフローツリーについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
ちなみに、不動産業界では「税金の話は税理士へ」というルールが税法上定められているため、税務に関するアドバイスを避ける業者も少なくありません。
「税金の話は専門外なので…」と一線を引くケースも多く、トラブル回避のために税務領域には立ち入らないというスタンスが一般的です。
WealthAgentでは税金の話にも積極的に触れていきます。
もちろん、税務の最終判断は投資家自身が責任を持って調べる必要がありますが、不動産投資は“税金との戦い”でもあるので、そこから逃げられないのです!
(脱税をすすめるわけではありませんよ…笑)
今回ご紹介したキャッシュフローツリーは、不動産投資の収益構造を理解するための基本知識です。
ぜひこの機会にしっかりと身につけて、より戦略的な投資判断に役立ててください!