不動産投資の損益分岐点(BER)

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損益分岐点:BER

不動産投資の勉強をはじめますと、セミナーや本等で「返済比率は50%以下」というフレーズをよく目にします。

返済比率の計算は・・・

・借入返済額÷満室家賃収入

ですので、返済比率が50%ということは下図のようになります。

上の表のように、キャッシュフローを50%以上得たい、と考えれば・・
「家賃収入を上げる」か「借入金返済額を抑える」
この2択になります。

但し、返済比率50%になる「高利回り物件」を探すのは、特に1都3県では大変難しいので、「借入返済金額を下げよう」という発想に至ります。

そして、借入返済金額を抑える為には、金利を低くし、期間を長く取る必要がありますので、そのような相談を銀行にしますと「新築か築浅物件」を勧められます。

理由は、多くの銀行の融資姿勢が・・

金利は個人属性
・期間は(法定耐用-経過年数)」

で決まることが多く、新築であれば耐用年数が丸々残っているので、銀行によっては30年~35年の期間設定が可能となり、限りなく返済比率50%に近くなるからです。

中古物件の場合、特に木造は法定耐用年数22年の為、融資期間が短く返済比率が高くなってしまいますので、返済比率を重視した場合、中古物件は対象外になりやすいのですが、それでは新築の方が不動産投資に適しているのでしょうか?

現代の建築状況

少し話は反れますが、建築業界に13年携わり数千棟以上の建物を見てきた筆者としては現代における建築に少なからず疑問を抱いています。

今の戸建住宅や共同住宅は、コストを抑える為に設計段階でギリギリの「構造計算」を行い、それに基づき工場で建材をプレカットして現場に運んで組立てる「プレハブ住宅」が9割以上です。

昔は現場に何人もの大工さんが働き、現場でしかできない工夫や仕事を丁寧に一生懸命され、一棟完成させるのに少なくとも半年は必要でした。

そのように手間暇かけた建物は頑丈で22年しか耐えられないわけがなく、実際に築40年近くの木造住宅が、大地震も乗り越え、未だに家族で集まる憩いの場になっていたりもします。

今では大工さんは現地に1~2人もいれば十分で、たまに若い外国人が1人で現場に携わっている姿を見かけますが、それでも2~3ヶ月程度で建物が完成します。

建築基準法に則り建築しているのでしょうが、なんだか簡素に感じてしまい、同じ構造で「現代の建築物」と「昔の日本建築物」の強度比較をする実験をしたならば、おそらく「昔の日本建物」の方が強いと個人的には考えますが、しかしながら融資は新築の方が期間は長いのです。

建物維持費:OPEXの存在

決してプレハブ住宅が悪いというわけではなく、価格を下げて建築する為には必要不可欠な工法ではありますが、今後建物の維持費(OPEX)として大きな金額が発生するのではないか、という一末の不安はあり、もしそれが現実になれば下の図のようになります。

この仮定が正しければ、中古物件の返済比率60%を購入したとしても、利益はあまり変わらないのではないでしょうか。

何を言いたいかと言いますと、返済比率を意識すると新築系への投資意識が強くなりますが、そうではなく、「OPEX」の存在を忘れてはいけない、ということです。

返済比率が高くても、既に数回大規模修繕を行っているような中古物件であれば、想定外の大規模修繕リスクのある新築よりも、利益が安定する可能性は高くなります。

よって、返済比率も大変重要な指標ですが、それと同じくらいに・・・

・(OPEX+借入返済金額)÷家賃収入=BER

このBERを意識するべきで、どれ程のキャッシュフローが得られるか、という指標にもなります。

BERは(Break Even Rate)と呼ばれ、日本語でいう「損益分岐点」です。

BERを図にすると以下の通りです。

BERが把握できればキャッシュフローを維持する為にはどのような施策を行っていけばいいのか、というように「新築・中古」問わず意識が「賃貸経営」へ移りますので、今後の維持管理費を重要視するようにもなります。

また、先程の表のように、もしキャッシュフロー30%(BER70%)であれば、家賃収入の30%が空室であっても耐えられる、との解釈に至ります。

CERで空室率を把握

キャッシュフロー30%(BER70%)であれば、家賃収入の30%が空室であっても耐えられる、とのことですが、具体例で考えてみました。

1室あたり必要な1年間の稼働日数を「最低必要稼働日数」といいますが、これを計算すると・・

・365日×空室率30%=109日

よって、1年間で109日までは空室に耐えられる、という事になり109日は約3.5ヶ月なので1年間で1室の空室期間が3.5ヶ月でも赤字にはならない、という事が分かります。

また、空室率30%として1棟10戸のアパートの場合・・・

・10戸×30%=3戸

1年間で3戸までは空室に耐えられる、という事になりますので・・・

・109日÷3戸=36日

というように各3戸の空室期間は36日まで、ということが分かります。

BERが把握できれば空室期間も把握することができますので、とても重要ということが分かります。

そして、BERは年々上昇する性質があります。
何故なら、特に新築は家賃が年々下がるからです。

そして、いずれBER80%を上回る時も訪れるかもしれませんが焦ってはいけません。
GPIを上げる努力が必要ですし、その時に相談できる心強い管理会社様とのお付き合いも忘れてはいけません。

何より家賃収入を下げず、むしろ上げるような空室対策を施してくれる会社様が一番頼りになりますが、何をしても家賃が上がらない物件であれば施しようがありませんので、購入時の見極めがやはり大切になります。

いずれにしても、不動産投資は「賃貸経営」ということがお分かり頂けたと思いますので、購入後に安心して「賃貸経営」のできる物件を選びましょう。

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