【不動産初心者向け】減価償却で節税するために知っておくべき「建物割合」と「固定資産税評価額」の知識

建物の減価償却はなぜ節税になるのか?
固定資産税評価額が使われる理由は?
建物割合はどう決めるのか?を体系的に解説

目次

〜不動産評価の仕組みから税務署の思考、節税スキームの本質まで〜

毎年恒例ですが、年末が近づいてきますと、不動産投資における節税の問い合わせが増えてきます。
理由は、不動産投資において、建物の減価償却は最も強力な節税手段のひとつ、で翌年以降の確定申告が関係しているからです。

建物は時間の経過とともに価値が減少すると考えられているため、税法上は 建物の価値を耐用年数に応じて毎年経費として計上できる 仕組みになっています。

この仕組みを活用することで、課税所得を圧縮し、結果として税負担を軽減することができます。

しかし、減価償却を行うためには、「建物の取得価額」=建物の金額を正しく計算する、ことが必要となります。

そして、この建物の金額を決める際に重要になるのが、建物割合(建物が総額のうち占める割合)
です。

では、この建物割合は、どのように決められるのでしょうか。

これらを決める際、多くの方が「路線価」「固定資産税評価額」「建物割合」「減価償却」といった専門用語に触れることになります。

しかし、これらの言葉の意味や相互関係を正しく理解している人は決して多くありません。

特に、節税目的で不動産を購入する場合、これらの知識が曖昧なまま進めてしまうと、後になって税務署からの確認を恐れたり、想定していた節税効果が得られなかったり、さらには・・

「そもそも節税目的の不動産購入は本質的にリスクが高い」

という根本的な事実に気づかないまま意思決定をしてしまうこともあります。

本記事では、初心者でも理解できるように、

・路線価と固定資産税評価額の関係
・建物と土地の按分方法
・税務署がどのような観点で確認を行うのか
・節税目的の不動産購入に潜む本質的なリスク


まで、体系的かつ丁寧に解説します。

また、「税務署の回答の性質」「納税者心理」「不動産業者としての説明責任」など、実務の現場でしか語られないリアルな視点も盛り込みます。

1. 路線価とは何か?その本質的な役割を理解する

まず、「路線価とは何か」を正しく理解する必要があります。
路線価とは、国税庁が毎年公表する「道路に面する土地の価値を示す指標」です。

一般的には相続税評価の基準として知られていますが、固定資産税評価額を算出する際にも重要な基準値として利用されます。

しかし、ここで多くの方が誤解しているのが、
「路線価 × 敷地面積 = 土地の固定資産税評価額」ではない、という点です。

例えば、「路線価:190,000円/㎡」で「土地:100㎡」の場合、単純計算では1,900万円となりますが、実際の固定資産税評価額はこのような単純計算では決まりません。

なぜなら、路線価はあくまで「基準値(指標)」であり、そこから土地の形状や奥行、間口、道路付け、地積誤差など、さまざまな補正率を掛け合わせて最終的な評価額が決まるからです。

つまり、路線価は「スタート地点」であり、そこから複雑な補正を経て、ようやく固定資産税評価額という“税金計算のための値”が導かれるのです。

2. 固定資産税評価額はどのように決まるのか?

二段階評価の仕組み

固定資産税評価額は、以下のような二段階のプロセスで決定されます。

■【一次評価】

路線価 × 土地面積 × 「標準宅地からの減価補正率」= 固定資産税本則評価額

この段階では、標準的な宅地と比較して、土地の形状や状況に応じた減価補正が行われます。
例えば、三角形の土地や奥行が極端に長い土地、間口が狭い土地などは、標準的な宅地と比べて利用価値が低いため、減価補正が適用されます。

■【最終評価】

固定資産税本則評価額 × 各種補正率= 固定資産税評価額

ここで適用される補正率には、以下のようなものがあります。

  • 奥行補正率(奥行が短い・長い場合の調整)
  • 不整形地補正率(三角形・台形・変形地などの減価)
  • 間口狭小補正率(間口が狭い土地の減価)
  • 道路補正率(複数道路に接する場合の加算・減算)
  • 地積誤差補正率(登記面積と実測面積の差による調整)

これらの補正が加わることで、最終的な固定資産税評価額は「路線価×敷地面積」よりも低くなる傾向にあります。

■ 固定資産税評価額は「税金計算のための値」である

固定資産税評価額は、自治体が課税のために算出したものであり、実際の売買価格を反映したものではなく、土地や建物の本来の価値を示すものでもありません。

つまり、固定資産税評価額は「税金計算のための参考値」であり、売買価格や市場価値とは別物です。

3. 建物割合はどう決まるのか?

税務上もっとも優先されるのは「売買契約書の金額」

次に建物割合についてです。

不動産を購入すると「土地」「建物」、この2つに分けて取得価額を計上します。
理由はシンプルで、

土地は減価しない(=減価償却できない)
建物は減価する(=減価償却できる)

という税法上の考え方があるためです。
そのため、建物の金額を正しく計算しなければ、減価償却費が計上できず、経費が少なくなり税負担が増える、という問題が発生します。

そこで必要なのが建物割合で、購入価格のうち、建物が占める割合を決めることです。

例)
総額:2,000万円
建物:800万円
土地:1,200万円
→ 建物割合 40%

この建物割合をどう決めるかが、減価償却の基礎となり、建物と土地の割合をどのように決めるかで、減価償却や税務申告に大きく影響します。

そして、税務上、建物の取得価額として最も優先されるのは、「売買契約書に記載された建物価格」です。

これは国税庁の明確なルールであり、「売主と買主が合意して決めた金額が最優先される」という考え方に基づいていているためです。

4. 建物割合>土地割合が合理的に説明できる理由

売主と買主が合意して決めた金額が最優先される」という考え方に基づき、建物割合を土地割合よりも高くすることは、決して悪いことではありませんが、税務署から否認されるリスクも否めません。

そのリスクを回避するには、建物割合が土地割合よりも高いという、十分に合理的に説明できる理由が必要となります。

【具体的な合理的理由】

  • 建物の固定資産税評価額が土地より高い
  • 土地は地域特性(駅距離・傾斜地など)により評価が低い
  • 建物の状態が良好で、+20%の価値上昇が妥当
  • 今後の修繕工事により建物価値がさらに向上する見込みがある
  • 近隣の土地実勢価格(直近の成約事例3件ほど)や公示価格から導いた取引単価を敷地面積にかけ、売買価格から差引いた価格を建物価格とする

これらの理由から、「建物割合>土地割合」という状況は十分に合理的であり、税務署に対しても説明可能となります。

5. 按分方法に「正解」は存在しない

不動産を購入した際、減価償却を行うためには、総額のうち建物がいくらで、土地がいくらなのか
を明確にする必要があります。

その際に一般的に使われるのが、 固定資産税評価額です。

固定資産税評価額は、自治体が土地と建物を別々に評価しているため、按分の根拠として実務でも広く使われています。

具体的には、市区町村から土地と建物それぞれの評価額が記載された「固定資産税納税通知書」が送られてきます。

例として、以下の評価額だったとします。

  • 土地の固定資産税評価額:1,200万円
  • 建物の固定資産税評価額:800万円
  • 合計評価額は1,200万円 + 800万円 = 2,000万円

この場合の建物割合は40%です(建物評価額800万円 ÷「土地+建物の評価額2,000万円」)。

つまり、建物割合は40%土地割合は60%となります。

そして、購入価格が 3,000万円 の物件だった場合、建物と土地の価格を決めるには・・・

  • 建物価格:3,000万円 × 40% = 1,200万円
  • 土地価格:3,000万円 × 60% = 1,800万円

この 1,200万円 が減価償却の対象となる建物価格となります。

このように、建物割合と土地割合を決める時、自治体が土地と建物を別々に評価した固定資産税評価額が、按分の根拠として広く使われています

そして、一般的に、建物と土地の割合を決めるには、「固定資産税評価額」などを基準に按分しますが、固定資産税評価額按分の根拠として使わなければいけない、というルールはありません。

なぜなら、税務上、明確な按分基準が定められていない、ためです。
ですから、最も優先されるのは、 売買契約書に記載された建物価格(=合意した金額)となるわけです。

6. 税務署が確認するポイント

もし、税務署から建物と土地の確認があったとしら、税務署が確認するのは、建物の価値を高く評価する合理的な理由があるかどうかです。

前述の通り十分な理由がれば、建物割合が否認される可能性は低いと考えられ、実務上も、建物割合や契約書の建物価格を理由に否認される事例は、少ないと思われます。

7. 税務署が否定的な回答をする理由

もし、固定資産税評価の按分が「土地>建物」であった場合、そして、売買契約を「土地<建物」で結ぶ予定であった場合に、どちらを減価償却の対象とするのかを税務署へ問い合わせれば、固定資産税評価額の按分、と答えるでしょう。

税務署は「適正な税徴収」が使命です。

税務署の使命は国民から適正に税を徴収することであり、その性質上、納税者にとっては「真面目に申告するほど負担が重くなる」と感じられる側面もございます。

そのため、いかに税負担を抑えつつ手元資金を残すかは、一種の知恵比べのような面もありますが、いずれにしても、税務署の否定的な回答=正解という意味ではありません

8. 節税目的の不動産購入は本質的にハイリスク

今回、不動産評価の仕組みから税務署の思考、節税スキームの本質までまとめましたが、基本的には「 節税目的の不動産購入は本質的にリスクが高い」という点です。

中古物件の多くは「土地>建物」となるため、節税効果を出すためには建物割合を高く設定する必要があります。

しかし、税務リスクを避けるためには「土地<建物」の物件に絞る必要があり、これは築浅物件が中心となります。

ただし、築浅物件は耐用年数が長く、 減価償却による節税効果は限定的となります。

■まとめ

不動産評価や税務に関する重要なポイントは次のようになります。

まず、土地の価値を判断する際に用いられる路線価はあくまで“基準値”であり、実際の固定資産税評価額は、そこから複数の補正を加えることで算出されます。
そのため、路線価そのものが最終的な評価額を示すわけではありません。

また、固定資産税評価額は自治体が税金計算のために用いる内部的な評価であり、市場価格や実際の売買価格とは大きく異なることも珍しくありません。

さらに、建物の取得価額として税務上もっとも優先されるのは、固定資産税評価の按分ではなく、売買契約書に記載された建物価格です。
これは「売主と買主が合意した金額が最優先される」という国税庁の考え方に基づいており、実務でも広く認められ、合理的に説明できる根拠があれば「土地<建物」であっても問題ないと思われます。

税務署は性質上、納税者に有利な回答を避ける傾向があり、相談すると否定的な意見を述べられることもありますが、それは必ずしも「否認される」という意味ではなく、あくまで慎重な姿勢を示しているにすぎません。

とはいえ、「土地<建物」が絶対に否認されない、とは言えないので、節税目的の不動産購入は本質的にリスクが高く、物件選びや税務判断を誤ると期待した効果が得られない可能性があります。

こうした点を理解したうえで、節税物件を購入する際には、慎重に判断しましょう

最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。
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Q. 相談は有料ですか?

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Q. 物件を紹介してもらうことはできますか?

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Q. 個別相談ではどんな資料を準備すればよいですか?

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