不動産投資には、大きく分けて・・・
・区分マンション
・一棟アパート・一棟マンション
以上の投資に分かれますが、今回は「区分マンション」投資について分析してみたいと思います。
区分マンション投資の現状
今、建築材料が高騰していることもあり、首都圏の新築マンションの平均価格は1億を超えました。
円安の影響もあり、新築マンションを投資用として外国人投資家が購入している背景から「区分マンション」の相場も高騰しています。
ですから、過去の低価格時に「区分マンション」投資を行っている人は、今売却すれば儲かる可能性が高いと思いますが、逆に価格が高騰している今、「区分マンション」投資を行うのは高いリスクを伴います。
「それは分かっているけど、区分マンションを購入する価値はまだまだある」
と思う投資家は一定数いらっしゃるのも現実です。
理由は、「区分マンション」は「一棟アパート・一棟マンション」と比べて少額で始めることができ、生命保険、節税、相続税対策、年⾦対策になる可能性がある、という理由からではないでしょうか。
また、ほとんどの場合、フルローンで融資を利用できるのも理由の一つとして挙げられます。
今回は「区分マンション」投資の分析ですから、投資効率にこだわって「区分マンション」投資の中身を考えてみたいと思いますが、多くの投資家が求める「区分マンション」の投資効率は、「損益通算」と「売却益」です。
区分マンション投資の損益通算

損益通算とは、不動産所得で生じた損失を、給与所得と相殺して全体の課税所得金額を減少させることですが、その差額は還付金として返還されます。
そして、「区分マンション」投資で損益通算による還付金を狙うのは、個人の給与所得が高ければ高い程、有効的かもしれません。
不動産所得で生じた損失で課税所得金額が下がれば、上手く行けば税率も下がり税金が低くなるわけですが・・
一方、損益通算を狙うためには課税所得金額を大幅にマイナスにしなければならず、
「不動産所得<減価償却」
という構図が求められることも事実です。
ですから、CFはマイナス(キャッシュアウト)になるケースが多いのですが、表面利回りが低くCFがマイナスであっても、損益通算による還付金でマイナス分を補えれば保有する価値がある、との考えに至ります。
とはいえ、はたしてそう上手く事が進むのでしょうか。この点がはっきりとしないと前に進めない点でもあるかと思います。
では、「区分マンション」を購入した場合の・・
「マイナスCF+還付金=?」
この?を例をあげて考えてみましょう。
「マイナスCF+還付金=?」を考える

例として、以下の「区分マンション」を購入したシミュレーションを行いました。

まず初めに「CF:インカムゲイン」について見ていきましょう。
<CF:インカムゲイン>
家賃年収についてですが、毎年家賃△1%、稼働率80%(空室約2.2か月)、以上の設定を行い初年度のCFを計算してみます。
※下記の表は全て千円単位
※下記の表はスマホで見る場合、クリックすると表が拡大します

表面利回り4.4%だと、年間返済金額の影響で毎年のCFはマイナスになりますが、これは想定の範囲内です。
ではこの場合、損益通算による還付金を狙うことは可能でしょうか?
以下の表は、CFとは別に課税所得額を計算したシミュレーション表となります。

以上の表のように減価償却が大きく影響し、毎年の課税所得額は赤字計上することができ、5年後であれば△373万円/年、10年後であれば△366万円/年、の赤字計上が可能となります。
では、この赤字と給与所得を合算した場合、どのようになるのでしょうか。
給与所得1,000万円を例として考えてみましょう。

上の表のように、給与所得1,000万円の場合、通常税率は33%で毎年176万円が所得税として一般的に考えられますが、ここに不動産所得のマイナスを計上したのが下の表となります。

課税所得額:2をマイナス計上しことから、本来であれば、損益通算②の税金176万円/年を支払う必要があるところ、5年後は82万円/年、10年後は84万円/年に税金を抑えることができます。
この差額が還付金として返還されますが、毎年の還付金をまとめたのが下の表となります。

では、この還付金を利益と考えた場合、TOTALのCFはどうなるのでしょうか。



上の表のように、5年後のCFは△46万円/年、10年後のCFは△63万円/年、となります。
そして、それぞれのCF累計は5年後△645万円、10年後△349万円/年、となりました。
以上のことから、「マイナスCF+還付金=マイナス」という図式が浮かび上がると思われます。
<売却益(キャピタルゲイン)>
次に本物件を5年後に売却したことを想定した、売却益(キャピタルゲイン)のシミュレーションを見てみましょう。
まず初めに、売却価格を設定しなければなりませんが、不動産投資の場合、物件価格を計算する公式は以下の通りとなります。
もし、5年目に売却を想定した場合の売却価格はいくらでしょう。
現在の表面利回は4.4%ですが、5年後はおそらく表面利回り4.5%でなければ売れないと仮定した場合・・・
となります。

売却価格から売却時諸費用と借入残債を差引くと、52万円がキャピタルゲインとなることが分かりました。
だだし、不動産を売却した場合は分離課税方式に則り、下記のように123万円の税が課税されます。

そして、この課税所得税を差引いた売却益は△70万円で下記のようになります。

<まとめ>

5年後に売却したことを想定した、インカムゲインとキャピタルゲインをまとめてみました。
・5年後のインカムゲイン:△645万円
・5年後のキャピタルゲイン:△70万円
・合計:△715万円
合計△ですから、投資効率が低いですよね。
ちなみに、ここで忘れてはいけないのが自己資金の投入です。
本物件はフルローン想定ではありますが・・・
以上の付随費用が別途発生します。
本物件の場合、自己資金は570万円でした。よって、インカムゲインとキャピタルゲインの合計は、下記の通り修正となります。
・5年後のインカムゲイン:△645万円
・5年後のキャピタルゲイン:△70万円
・自己資金:△570万円
・合計:△1,285万円
区分は1戸の為、入居者が出てしまうと1円も入ってきません。
また、空室が出た場合、エリアにもよりますが、2.2ヶ月(73日)前後は募集期間と考えた方がよいかと思いますので・・・
つまり稼働率は80%で計算する必要があると思います。
表面利回りが低いこと、稼働率が低いことを鑑みると、投資効率が低くなることも納得できるところかと思います。
区分マンション投資の資産性

区分マンションの資産性についてですが、建物の評価額を出す際に最も多く利用されている公式は・・・
RC造の場合、建物再調達価格は25万円/㎡前後で計算するケースが多く、仮に延床面積70㎡で計算すると・・・
よって1,005万円が建物価値と思いがちですが、建物は毎年減価償却を行いますので、数年後には簿価が1円になり、つまり金融機関からの建物評価額はほぼ0円になります。
資産形成で保有したはずの不動産が、重い残債しか残らない「負動産」に化ける瞬間がここにあります。
これに比べて「土地」に減価償却の概念は存在しませんので、建物評価が0でも土地評価額があれば、末永く資産として存続します。
「区分マンション」と比較するのに「一戸建」もございますが、どちらがオススメかと言うのであれば、土地の資産性がある分、「一戸建」の保有がオススメかもです。
よって、損益通算による還付金を目的に、また、売却益を目的に「区分マンション」投資を行うのは、ハイリスクのみと、いうところでしょうか。