リースバックってご存知でしょうか?
よく、賃貸併用住宅の売買に伴うものなんですが、
賃貸併用住宅とは、賃貸と住宅部の共存物件であって、
住宅部分に、この不動産の所有者であるオーナーさんが、
住んでいらっしゃるケースがあります。
そして、賃貸併用住宅の売却はしましたが、
賃料を支払って、今まで通り、オーナーさんが住宅部分に住まわれること、
これをリースバックと呼びます。
この物件を購入する場合、前オーナーさんが引き続き住宅部分に住むことになりますので、賃料も支払ってくれるのであれば、住み慣れた場所を移動することも考え難いので、空室リスクが減っていいのでは?と考える投資家さんも多いと思います。
但し、リースバックは注意が必要です。
それは、必要費と有益費、そして造作部分を、前オーナーから請求される可能性があるからです。
必要費とは、屋根の防水塗装や、物件を維持するために必要な修繕にかかる費用を指しますが、通常、必要費は、物件のオーナーが負担するものですから、その物件を購入した新オーナーさんの負担というのが一般的です。
ただし、リースバックをしている前オーナーである賃借人が、勝手に負担してしまう場合があります。
例えば、大手ハウスメーカーで賃貸併用住宅を建築された前オーナーさんの例ですが、
ハウスメーカーさんは、15~20年に一度、外壁や屋根の防水工事をしないと、
その後の建物に関する保証が継続できない、というシステムが多いんですね。
それを建築時に知っているオーナーさんは、来るべき時に備えて、修繕費を準備していますから、その時期が近づいて、ハウスメーカーさんから連絡がくると、
「はい、わかりました」と言って、勝手に修繕を行ってしまうケースが稀にあるんですよね。
決して悪意があるわけではなですし、建物を健全な状態で維持をしていきたい、
という考えなんでしょうけれども。
ただ、新オーナーである投資家さんの中には、管理会社さんに建物修繕を任せている方もいますし、もっと安価で大規模修繕工事をしてくれる業者さんを知っていたりもしますので、
勝手に前オーナーに修繕費を支払われてしまって、後からその工事費を請求されると困っていますが、この場合、どうなると思いますか?
この場合、借地借家法が適用されて、
物件の維持管理に必要な費用である必要費を賃借人が支払った場合、
賃貸人は賃借人に対して、直ぐに償還をしなければならなくなります。
ですから、リースバックをしている前オーナーが支払った金額を、
新オーナーさんは、前オーナーさんへ、支払はなければならない、
といことになります。
もし、これを拒むと、前オーナーさんの賃貸借契約期間が過ぎても、
前オーナーさんは、建物の明け渡しを拒むことができる「留置権」
を行使することができますので、新オーナさんと、前オーナーさんとの間でトラブルが発生します。
また、店舗の入り口の改装工事費ですとか、その店舗のカウンターの改造費用など、
賃借人が物件の価値を高めるために行った改良に関する費用を有益費と呼びます。
この有益費についても、賃貸借契約終了時に賃貸人に対して償還を請求することが可能です。
そして、部屋の中にDIY等で造作した造作物に対してのお金を請求すること、これを造作買取請求権と呼びますが、造作買取請求権も、リースバックをしている賃借人から請求されましたら、支払わなければなりませんし、造作買取請求権に関しては、形成権と言って、造作買取請求があったその時に、造作に要した費用を新オーナは前オーナーへ支払う、という契約が強制的成立することになります。
新オーナさんの承諾は必要ないんですよ。
それだけ、この借地借家法は、賃借人に対して、とても有利な法律になっているんで、
新オーナーである投資家さんにとっては、ちょっと怖いですよね。
でも、賃貸借契約書に「必要費や有益費、そして造作買取請求権は無し」
とする特約を締結することができます。
ですから、賃貸併用住宅のように、一部の部屋を前オーナーが使用していて、リースバックを希望されている場合に、安易に賃貸借契約を締結しますと、後々面倒なことにもなりますので、契約内容をしっかりと確認することをオススメします。